鉄器時代の女王の「魔法の鏡」が英国で発見!史上最大の宝庫Melsonby Hoardが解き明かす古代の謎【ヨークシャー博物館】

カルチャー

TL;DR

  • 英国史上最大の鉄器時代の金属器コレクション「Melsonby Hoard」の規模と内容
  • 「魔法の鏡」がなぜ女性の権力と結びつくのか
  • ブリガンテス族の女王カルティマンドゥアとは何者か
  • 宝庫が埋められた理由として提示されている4つの仮説
  • ヨークシャー博物館の特別展の概要

📋 この概要はAIが生成しています


金属探知愛好家が探知機を持って歩いていると英国史をひっくり返す発見をした。という、なんともロマン溢れる話がある。

2021年頃、北イングランドのヨークシャー近郊の畑で、金属探知愛好家が金属反応に気づき考古学者に連絡した。その後ダラム大学の研究チームが発掘を進め、鉄器時代に由来する800点以上の鉄器・銅合金製の遺物を掘り出した。馬の頭絡ビット、饗宴用の大鍋、そして女性の権力を示す鏡まで出てきた。

「10点の宝庫でも異例で興奮するのに、これほどの規模は前代未聞だ」とダラム大学考古学部長のトム・ムーアは2025年にガーディアン紙に語っている。

この宝庫は近隣のヨークシャーの村の名をとって「Melsonby Hoard(メルソンビー宝庫)」と呼ばれており、英国史上最大の鉄器時代金属器コレクションと位置づけられている。それらは何年も丁寧に調査され、2026年5月15日 ヨークシャー博物館で初めて公の場に出ることとなった。

特別展のタイトルは「Chariots, Treasure and Power: Secrets of the Melsonby Hoard」

Yorkshire Museam 展示案内ページ


800点以上の遺物と、正体不明の「ブロック」

展示の目玉のひとつが「ブロック」と呼ばれる巨大な物体だ。重さ約330ポンド(約150kg)、溶け合った遺物の塊で、表面からは槍先や荷車部品が確認できる。しかし中身は「ほぼ謎」だとヨークシャー博物館の考古学キュレーター、エミリー・ノースはBBCニュースに語っている。

「表面からチラリと隠れたものが見える。スタイル化された猪の頭がある物体の一部と、人の顔も……鉄器時代のブリトン人が自分たちを描いた顔を見られるのは、本当に特別なことです」とノース氏はガーディアン紙にも語っている。

このブロックは布に包まれてひとつの溝に埋められており、残りの宝庫は別の溝から発掘された。それ以外の遺物の大部分は馬引き車両に関連するもの。28枚の大きさが異なる鉄製タイヤ、U字型の鉄製ブラケット、リンチピン、ヨーク金具、フィニアル、手綱環など。研究者たちはこれらを四輪馬引き車両の残骸と推定しており、鉄器時代のブリタニアにおけるそうした車両の初の証拠だとしている。

ダラム大学のコンサーバーター、エミリー・ウィリアムズは2025年にナショナルジオグラフィックに「遺物を受け取るのは消防ホースから水を飲むような感じだった。ラボのあらゆる表面がメルソンビーの遺物で埋まっていた」と語っている。

「魔法の鏡」と女性の権力

宝庫には青いガラスビーズとともに鏡が含まれている。鉄器時代において、鏡は権力を持つ女性と結びつけられる象徴的な遺物だ。

「鏡は私が最も好きな遺物です」とノースはガーディアン紙に語っている。「この宝庫がなぜ埋められたかという謎を解く手がかりになるかもしれない。」

そして彼女はこう続ける。「女性の力に関連する魔法の物体です。」

Melsonbyはスタンウィックの近くに位置する。スタンウィックはブリガンテ族と呼ばれる部族が拠点とした鉄器時代の要塞で、1世紀の重要な権力の中心地だった。この時期にブリガンテ族を統治していたのが、ブリタニア史上初の女性支配者として記録される女王カルティマンドゥアだ。

彼女が権力を握ったのは紀元43年頃、ローマ帝国がブリタニアの植民地化を開始した年と重なる。多くの部族がローマに抵抗するなかで、カルティマンドゥアはローマと同盟を結ぶという判断を下した。その治世は69年まで続いた。

ノースによれば、この鏡はカルティマンドゥア本人のものではなかったかもしれないが、彼女の祖母や母が所有していた可能性があるという。

地中海産のサンゴが北イングランドに

大型の鍋と碗は「ほぼ間違いなく饗宴に使われた」とムーアはダラム大学の動画のなかで語っている。鍋はシチューなどの食べ物、碗にはワインかビールが入っていたと推定している。

そして碗には彫刻された珊瑚で精巧な装飾が施されており、研究者たちはこの珊瑚が地中海から運ばれてきたものと考えている。

「これが示しているのは、そのような素材を入手して物を飾ることができるほどの、ヨーロッパ全体にわたるつながりと接続性です」とムーアは動画のなかで語っている。「鉄器時代のブリタニアで誰もが感銘を受けるものだったはずです。」ー

2000年前の北イングランドに地中海の珊瑚があった。これは、誰かに話したくなるような想像するだけで楽しくなる話だ。

「北部は辺境ではなかった」

歴史的に、鉄器時代のブリタニアにおける富はイングランド南部に集中していたと考えられてきた。Melsonby Hoardはその通説に真っ向から挑む。

「これは、あの地域の人々が南部の人々と同等の素材、富、地位、ネットワークを持っていたことを示している」とムーアは2025年にガーディアン紙に語った。「北部が鉄器時代において辺境であることは絶対にない。南部の鉄器時代のコミュニティと同様に、相互につながり、力強く、豊かだった。」

800点以上の遺物が示す富は、ノースの言葉を借りれば「非常に重要な誰か」にしか帰属しえないほどの規模だという。

なぜ埋められたのか、4つの仮説

これだけの価値ある遺物がなぜ地中に埋められたのか。展示では「祭り(feast)」「祭祀(festival)」「戦い(fight)」「葬儀(funeral)」という4つの仮説を提示している。

多くの遺物は埋められる前に損傷を受けていたと見られる。折られたもの、燃やされたもの、その両方のものがある。銅合金の断片は部分的に溶けており、タイヤの木製部品は火にかけられた可能性があり、大鍋は岩で叩かれたような形跡がある。

一方、近くに人骨は発見されていないため、副葬品ではないと研究者たちは考えている。記念的な饗宴の場で処分されたものである可能性が高い、というのが現在の見立てだ。つまり正確な理由は未だ謎に包まれているようだ。

「これほど大量の高価な奢侈品が破壊されて地中に埋められた理由は、全くの謎です」とノースはBBCニュースに語っている。「こんなものを私のキャリアの中でもう二度と見ることはないだろうと思います。」−


特別展「Chariots, Treasure and Power: Secrets of the Melsonby Hoard」は、2026年5月15日からイングランドのヨークシャー博物館で2027年夏まで開催される。

2000年前の人間が自分たちを描いた顔が、地中から出てきた。その顔がいま、博物館のガラスケースの向こうに静かにある。なんかそれだけで、じわっとくるものがある。


引用元・出典
Sonja Anderson, “A ‘Magical’ Mirror the Powerful Queen of a British Tribe May Have Used Was Discovered in an Enormous Iron Age Hoard, Now on Display,Smithsonian Magazine, May 15, 2026.

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